国家連合12017年10月29日 11:18

か〜ごめぇ、かごめぇ、か〜ごのなかの・・・
うしろのしょうめめん、だ〜ぁれっ

国家連合のお話です。持論を述べる前に、幾つか基本的なところを確認しておきます。

EU(欧州連合)とは、駐日欧州連合代表部のHPによると、

現在28カ国が加盟しており、人口5億人を超え、全ての「欧州市民」に平和、繁栄、自由を保障している、とされています。

そして、

「EU加盟国はみな主権国家であるが、その主権の一部を他の機構に譲るという、世界で他に類を見ない仕組みに基づく共同体を作っています」。

「欧州市民」という言葉と加盟国が「主権の一部を連合に譲っている」という表現に注意して下さい。

イギリスが離脱する予定ですが、フランス、ドイツ、イタリア、スペインから、中東欧諸国、それに債務危機に揺れたギリシャまで、政治経済状況の異なる多様な国々が参加しています。

共通通貨ユーロを用い、加盟国に住む全ての欧州市民に、他の加盟国への移動の自由や会社設立の自由が保障されます。シェンゲン協定の締結国間では特別の出入国手続きが要らないので、例えば、フランスとドイツの国境近くのフランス側に住んでいる人が、ドイツの会社に就職して、毎日、通勤するということも可能です。そして、どの加盟国の人・企業も、域内のいかなる国でもその国の法の下に自由に会社を設立し、営業できます。

国境の敷居が低くて、まるで、県境を超える感覚ですね。

単一市場の創設が基本目的です。元々、経済分野での共同体であったものが、経済以外にも管轄を有するようになって、欧州共同体(EC)となり、今日の欧州連合(EU)に発展しました。

EU自体の運営及びEUの施策が各国からの拠出金で賄われています。

域内における法の統一という目的も有しており、実に多様で大量のEU法規制が各国を拘束しています。大まかに、欧州委員会が発案した法律案を、委員会および欧州議会と相談しながら欧州理事会が決定するものです。これを各国が自国法に変えたり、あるいはそのまま実施されます。各加盟国は、立法という主権の重要な作用を一部、連合に譲っているのです。

そしてEU法の解釈は、各国裁判所の他に、EU裁判所が行い、後者が解釈を統一する役割を担っています。

その他にも全体として、大幅に主権作用を委譲するという側面があり、そうして国家連合としての政策を域内全体で実現するのです。かくて「欧州市民」全体に、平和・繁栄・自由を保障していると言えます。

もとより各国が完全に主権を失うのではなく、各国議会・政府がその国の法の下で選挙・組成され、EUの法政策に反しない限り、独自の法が定立され、政策が実施されています。

スペイン・ポルトガルやチェコなどの中欧諸国には、西欧先進諸国の企業が進出して、工場を作り、その安価な労働力により、域内及び域外への貿易が促進されました。その結果、欧州の遅れた地域が経済的に発展したのです。

また西欧先進地域は、経済成長期にはトルコや北アフリカからの移民を大量に受け入れ、また、中東欧の貧しい国々からの移民が移住し、安価な労働力となりました。その結果、経済が停滞すると、移民に雇用を奪われた(と感じる)人々による、移民排斥運動
が各国で拡大するという皮肉な展開となっていますね。

しかし、確かに、欧州共同体が創設されてから、域内で大きな戦争になっていません。歴史上、あれだけ戦争を繰り返してきたこの地域に半永久的な平和をもたらしたのは事実です。

他方、アメリカ合衆国を見てみましょう。
アメリカ国家を構成する各州は、元々、地域政府として出発しました。その小国家の連合という形で合衆国が成立し、その後、南北戦争という内乱を経験しました。

この歴史的経緯から、現在でも、各州の主権が相当強く残されています。連邦政府、議会、裁判所の他に、各州それぞれの法に基づく州政府、州議会、州裁判所が存在し、連邦の管轄事項が肥大化しているとしても、なお、連邦と州の権限の綱引きが続いています。

法に関しては、殊に州主権が尊重されており、私法分野のほぼ全ての領域で、各州毎の独自の法が施行され、効力をもっています。

もっとも、同じ法文化の存在するアメリカ合衆国の中で、幾つかの大まかな法傾向に分類され、新しい問題についての新たな法発展は、例えば、NY州やCa州のような東海岸と西海岸の先進地域から生じ、徐々に、全米に広がるということが多いようです。各州裁判所・議会が、その法原則が正当であると考える場合に、自律的に採用するのです。

合衆国は国家連合ではありませんが、そこから出発したので、その名残が相当残されていますね。

EUが将来、合衆国のような連邦国家にまで進むのか、あるいは、現在の状態を維持するのか、むしろ破綻して、元のヨーロッパに戻るのか、予断を許しません。分散してばらばらになる力と集合して一つに纏まる力が共に働いているのが、欧州各国の国内問題であると同時に欧州連合全体なのです。

TPPやNAFTAその他の経済連携協定・自由貿易地域というのは、経済的に単一市場を作り出そうとする試みですが、政治や法の統一やそれ以上の主権移譲を伴うようなものでは決してありません。

WTOという全世界的で多角的なルールづくりは、それ以上の発展が今のところ頓挫しています。

WTO、TPPやNAFTAというと、関税を引き下げて、自由貿易を行えるようにするという側面に気を取られてしまいます。しかし、実は、自由競争を阻害する(WTOでは歪曲と表現します)要因を、各国の法と政策の中から取り除くという、国際的に強行される経済ルールであるという点が重要です。元々、アメリカの価値観の実現なんです。

日本は、各国・地域との二国間での自由貿易協定や経済連携協定の締結を急いでおり、国際競争に遅れまいと必死です。

その他、日中韓、ASEAN+日中韓、RCEP(左にインド、オーストラリア、ニュージーランドを加えたもの)といった枠組みの経済連携構想がありますが、基本的には関税引下げが議論の中心である自由貿易地域の創設というものに留まるでしょう。

TPPは、この点で、アメリカの意向に従って、WTOをも超える野心的な経済ルールの策定を含んでいたのです。

これが更に進んで、経済分野の包括的なルールづくりや、政治ないし法の分野に及ぶ、EUのような、東アジア共同体構想については、いまだ理想の域を出ません。

気を持たせるようで悪いのですが、以上を踏まえて、次回、持論を簡単に述べます。