トランプ大統領へのお土産2017年11月04日 22:21

先日、トランプ大統領へのお土産品がテレビで紹介されていました。色鮮やかな和柄の万年筆とか、金糸のクロスなど。
お祭り騒ぎですね。

さて

日米の貿易戦争のこと、覚えていますか。若い人は知らないでしょうね。日米の経済紛争は、アメリカ国内法である通商法を巡って展開して来ました。

1970年代から80年代にかけて、繊維、鉄鋼、テレビ、自動車、半導体について、日本政府、米国政府、日本産業界、米国産業界の組み合わせによる「協定」が締結されました。これによって、日本が輸出自主規制を行い、あるいは政府間協定が締結されたのです。

米国が対日貿易赤字を問題視し、米国通商法の一方的な手続きに従い、「協定」を日本に押し付けたのです。悪名高いスーパー301条が含まれます。日本からの輸出数量制限や価格調整(対米価格を高くする)、日本市場の解放等の内容を含みます。

農産物についても、牛肉、オレンジに関する日米交渉があり、日本市場の解放を迫られた経緯がありました。年配の方は覚えてられるでしょう。この結果、安いアメリカ産牛肉がスーパーの店頭に並ぶようになり、外食産業でも、安い牛丼が提供できるようになりました。オレンジも、みかんジュースの原料の一部になっています。

この間、日米の政府、産業界を巻き込んだ、熾烈な貿易戦争が継続していました。毎年のように日米交渉・協議のニュースが新聞紙上を賑わしていましたね。

米国通商法スーパー301条というのは、アメリカが自国の通商法に基づく厳密な国内手続きに基づき、不公正貿易を行っていると判断した国に対して、貿易上の対抗措置を取るというものです。

アメリカは、これによって国際的フォーラムであるGATTの手続きを回避していました。

アメリカの市場が重要であるので、一方的に、大幅に関税を引き上げられてしまい、輸出がストップしてしまうぐらいなら、米国側要求を呑んだ方がましだ、ということになります。

これを灰色措置と呼びます。

WTOが1995年に成立しました。WTOの紛争解決手続きは、アメリカ通商法の厳密な手続きをほぼ踏襲しています。米国国内法を国際法として採用したものです。しかし、国内手続きではなく、WTOという国際法に基づき、国際法廷において、ある国が不公正貿易を行なっているかを決定し、WTOに規定された対抗措置のみを取ることができることになっています。

同時に、灰色措置を禁止しました。そして、アメリカは、通商法スーパー301条を、WTOに違反しないように運用することを約束しました。

WTO紛争解決手続きでは、アメリカ自体が提訴国となることも、被提訴国となることもあり、訴えられたアメリカが実際に負けることも多いのです。

まとめると、経済紛争の解決方法がこの間に、政治的交渉の方法から、司法的解決へと移行したと言えます。

トランプ大統領は、WTO脱退も辞さないという発言もあり、スーパー301条の活用を示唆しています。もともと米国が枠組みの拡大・内容的発展を提唱したTPPも、反故にしました。

この50年ほどの、国際経済法の発展を全く無視しています。

多角的な多国間の枠組みを放棄して、二国間交渉の時代に舞い戻るということは?

国際ルールに基づく法的解決ではなく、政治的交渉の方法によるということです。

米国という巨大な国家が、その市場・経済力と政治力を振りかざして行う、二国間「交渉」とは、スーパー301条の恫喝を意味します。

日米貿易戦争の末期ごろから始まった日米構造協議は、内政干渉となり得る要望をお互いに行い合うというものです。その後も、政府間で、このような経済対話が継続しているとしても、WTOという国際法が、関税自主権その他の経済規制を行う主権を制限するものなので、その補完的なものとなったというべきでしょう。本来、WTOの場で、新たなルールを多国間で一括して決定すれば良いし、問題があれば、WTOのフォーラムにも持ち出せるのですから。

多国間の枠組みを伴わない、二国間交渉によることは、何れにせよ日本は避けるべきです。

トランプ大統領は、自動車ばかり気にしているようですが、その他米国産業界の意向を汲んで、米国内産業の保護・発展のために、どのような要求をしてくるか、心配です。農産物も、WTO交渉やTPPよりも、一層の解放を迫って来ないとも限りません。

どんなお土産が必要なのでしょう。

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