三権分立の勘違い 12017年12月05日 14:35

天皇退位の日程が決まりましたね。これを決定する会議の報道が暫く続きました。洋風建築の宮内庁の正面玄関が面白く、その一室に、円陣を組むようにして構成員が座している様子が写し出されていました。

古い日本映画に出てくる洋風(あくまでも洋「風」です)邸宅の応接間のような、だだっ広い部屋の中、最奥に首相が、入り口近くの手前に官房長官が座っていました。その横に、衆参両議院の正副議長や最高裁判所長官も居ました。

宮内庁長官のほか、三権の長が呼ばれたのです。

三権とは、言うまでもなく、立法権、行政権、司法権のことであり、国会、政府(内閣)、裁判所の長が勢揃いしていたのです。正副議長は、与党代表と野党代表でもあるようです。

この三権が分立して、権力の均衡と相互抑制によって、一個の権力が暴走することを防ぐ。憲法の下で、わが国の国家制度の根幹をなす仕組みです。

国会の多数が政府を形成する議院内閣制の下では、立法府と政府が結びつきやすいというのは容易に想像できます。

内閣ー総理大臣と官僚組織、及び与党議員の間で決定された政策が実現されます。「高度に政治的な」問題については、政治主導=政府・与党主導で決定されるでしょう。党内議論を尽くすというのが、すなわち国会議員の議論であり、内閣と与党のやり取りの中での決定事項が政党としての党議拘束を受けて、過半数を優に越える議員らの結論になります。国会の多数決はこの時点では既に決まっているのです。

政治力の強い、権力とか金で、議員を縛りつけることのできる党総裁であれば、その意向が絶対化する場合が有りそうです。

国民主権の原理の下で、第一の権力である国会による、政府に対するチェックとはどのように可能なのでしょうか。

もちろん、国会議員の選挙による国民のコントロールがあると、理念的には言えるでしょう。国民の信託を受けた国会議員の多数による決定だから、民主主義的決定なのだと。

しかし、具体的な政策論争が確かにあって、その政策に対する支持が議員を選ぶ理由になるとも、必ずしも言えないでしょう。総体として、景気が良いとか、今のところ生活が困ることがないとか、雰囲気と勢いで、政治家の個人的人気で、国民は選んでしまっている。理念は過信すると、欺瞞に通じます。

ここでの問題は、三権分立における、国会による政府に対するチェックの話です。政府与党の既定事項を、その後に、そんなに議論しても覆る余地がほとんどありません。国会の諸委員会による野党議員による質問と政府答弁が、唯一そのチェックであり得ます。これが新聞やテレビ放映を通じて報道されて、ある場合に世論が湧き起こり、政府批判に通じる。これしか無いですね。

議院内閣制の下でも、国会での議論が、真の意味での議論として、それこそ「朝まで」徹底した討論があり、そして、その議論によって相互理解を生じて、場合によっては政府の政策変更や修正がなされると言うのであれば、国会によるチェックと言えるかもしれません。

日本では、国会の議決というのは多分に形式的です。ところで、株主総会の在り方が、日本と西欧諸国とで随分異なります。日本式は経営陣の決定事項を淡々と説明して議決する、シャンシャン会議であるとよく言われます。本当の討論にはならないのが通常です。経営陣はそのように総会を乗り切ることばかり考えています。単なる形式的な手続きなのです。

裏で有力先に根回ししておいて、正式な場面での真剣勝負は避ける。見えない所で根回しと手打ちによる決定があり、法的手続きとしての議論の場というのは形式に過ぎないというのが日本的な決定方法の一般型でしょう。

むしろ、「合理的」、このことも多義的ではありますが、西欧流の合理主義を目指すのであれば、多数の面前での議論により事を決する態度が尊ばれ、決定過程の透明性が重要となるのではないでしょうか。

日本型株主総会は、国会の議論に似ていませんか?日本式決定方法の一般型ではないですか。

徹底的な議論と相互理解の試みがない。多数の面前での真剣勝負とならない。そうすると、日本では、政府に対するチェックというのは、あんなに少数の野党の、限られた時間の中での「質問」と「答弁」が報道されることによる、世論の、あるいは国民による監視、これしか有りません。

野党質問を「総会屋」扱いする訳にはいかないでしょう。

何とも、何とも、何とも。

わが国の国家制度って、頼りないというのか。言いようが有りません。

それでは裁判所による、チェックはどうでしょう。

次回に述べます。

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