移民問題?2018年09月15日 17:09

大型の台風がまた日本を通り過ぎて行きました。地震、未だかつて経験したことのないような豪雨、100年ぶりぐらいの大型の台風と、今年はどうしてしまったのでしょう。もはや天変地異です。

でも漸くしのぎやすくなってきました。( ^ω^)


1,EU諸国の移民問題と日本の移民受入問題は性質が異なる。

単純労働力の受け入れ(2018年06月23日)のブログ記事で、単純労働の受入れに伴い、わが国の支出すべき費用が増加すること、それでも受入れが必至であり、将来的には移民の受け入れが必要であることを主張しました。

それ以前にも何回か同様の主張を行いましたが、再度、言及しておきますと、日本における移民の受入れという問題の性質が、EUやアメリカにおける、移民問題とは全く異なります。

EUにおける移民排斥運動と、社会の分断や移民社会のスラム化とテロの頻発といった問題は、経済成長期に不足した単純労働をほぼ無制限に受け入れ、かつ、社会政策も不十分なまま放置したことが原因です。

「フランスでは、イスラム系だけで450~500万人で、全体では700万近い移民がいるといわれています」。全人口の10%を占めるとされています。
(細谷雄一「フランス共和国が誇る「社会統合」の限界」)(月刊Wedge 2015年3月号)
https://ironna.jp/article/1018

ドイツでは、移民の背景をもつ住民が全人口の19%(1556万7000人(2008年))とされています。
(ドイツ・ニュースダイジェスト「移民問題とドイツの課題」(2010年10月)
http://www.newsdigest.de/newsde/news/featured/3074-840.html

イギリスに住む外国出身者は860万人で、全人口の13%弱(2008年)だそうです。
「【統計で見る】イギリスにイギリス人は何人いる?8人に1人が外国出身者(2017年3月13日)」
https://japanesewriterinuk.com/article/nationality.html

これだけの外国出身者(2世3世を含む)が国内に暮らし、一部の人々の生活圏がスラム化したのです。どのようにあがいてもそこから抜け出すことの出来ない階級を出現させたわけです。低賃金重労働に喘ぎながら劣悪な環境に置かれる人達が想像できます。低賃金ゆえに市営住宅にしか住めず、その区画一帯が移民層で占められ、ドラッグや過激思想の温床となることもあるのです。スラムで生まれる子が将来に絶望して、テロ組織の一員となるとすると、アメリカにあるイタリア系やアイルランド系の白人や、黒人達の住区に生じるギャング組織を想起させます。もともと西欧社会は日本よりも明確な階級社会です。


2,わが国に居住する外国人

他方、わが国では、出入国管理という法務省の白書によると、「我が国における平成28年末現在の中長期在留者数は204万3,872人,特別永住者数は33万8,950人で,これらを合わせた在留外国人数は238万2,822人であり,27年末現在と比べ15万633人(6.7%)増加してい」ます。

特別永住者というのは、戦前からわが国に暮らす朝鮮半島出身者を含む在日外国人であり、その数は継続的に漸減しているので、現在、増加している人々はニューカマーの外国人達です。

政府統計のよると、平成29年のわが国の総人口が約1億2670万6千人なので、これとの比較で、外国人の割合が、約1.9%となります。

また、注意が必要なのは、この統計は在日外国人の人口なので、帰化した人達は含まれません。全体で外国出身の定住、永住者はもっと増えることになります。どこからを移民と捉えるべきかは別途問題となりそうです。3世まで?4世や5世はどうでしょう。

特別永住者である朝鮮半島出身者は既にその世代となっています。ちなみに朝鮮半島が第二次世界大戦前にわが国の領土であった時代、そこに住む人々は大日本帝国臣民でした。その人達が、サンフランシスコ平和条約の発効と同時に、韓国ないし朝鮮籍になったのですが、わが国に住む、これら外地戸籍に編入されていた人々が、その途端、在日外国人になったという経緯のある人達です。

余談ですが、朝鮮半島出身者と結婚した日本人女性が、戸主である男性の在籍する外地戸籍に編入されていたのです。この女性達がどうなったか分かりますか? サンフラシスコ平和条約が発効すると、外国人となったのです。

元々、日本で暮らす日本人女性が日本で朝鮮半島出身者と結婚して、そのまま日本に生活しながら、ある日、突然、外国人となる。想像を絶します。

話を元に戻します。先の在日外国人の統計の中には、約22万8千600人の技能実習生が含まれます。以前も言及したように、この資格は、同一人に対して、一生に一度だけ認められるものです。他の資格に転換できない限り、更新が認められないのです。3年ないし5年(新制度)を過ぎると必ず帰国し、その後は技能実習生としては、日本で就労できません。

技能実習生は家族の帯同が認められないので、日本で子を設けるということもありませんし、子弟の教育という問題も生じません。

その外国人にとっては、3年ないし5年間、家族と離れて暮らすのです。真の意味の技能実習、すなわちわが国の技術を習得して、その国の経済開発に役立てるという場合が、逆に少数派であるとすると、その他は、単身やってくる日本への出稼ぎ労働者であるということになります。

また、話が飛びますが、わが国の高度経済誌長期、昭和30年代以降、地方出身の出稼労働者が東京など大都市圏で蒸発するということが社会問題化したことがあります。単身で、3年、5年と、都会で働く一家の大黒柱が、仕送りを止めて蒸発してしまうのですから、残された家族も大変でしょう。

在日外国人である技能実習生の場合、母国に帰国する必然があるので(期間を超過すると不法滞在となり強制送還の対象となります)、わが国で蒸発することはなかなか困難だろうと思われます。日本人ですら、長期間家族と離れて、都会で暮らす孤独に苛まれ、自暴自棄になりかねないのですから、その心中はどのようなものでしょう。

わが国で、比較的長期間働く外国人達が、母国で暮らす家族に手紙を書きながら、仕送りを続ける様子が目に浮かびます。せっかく一定の技術を身につけて、日本の生活にも慣れ親しんだとしても、帰国しなければならず、そして受入事業者にとっても、研修等の手間と費用をかけて育てた働き手が、技術の継承すら危ぶまれるのに、その人を手放す必要があるのです。また一から新人(外国人)の研修から始める必要があります。

もちろん、資格を「技能」などの他の資格に転換できれば良いのですが、現在の所、その可能な職種は相当に高度な技術や知識を提供する業務に限定されるので、ハードルが高いのです。この間の政府の政策をみると、そのハードルを下げる議論があるように推察されますが、具体的にはまだよく分かりません。

例えば、町工場の旋盤職人はどうでしょう、牡蠣など魚介類の養殖業はどうでしょう。日本の優秀な技術の継承者がなかなか見つからないので、日本の製造業の基盤が揺らぎ、地方の地場産業が立ちゆかない。技能実習で来た人達が、とても良い人達で、熱心に働き、せっかく技能技術やノウハウを身につけたのに、それぞれの事業所はその人材を手放すことになります。


3,移民受入れの提言

単純労働について、将来的に必ず帰国する人達(外国人材)をこのまま増やし続けるのでしょうか。わが国に対する帰属意識ももちろん希薄でしょうし、ここで暮らすために、その文化やモラルに同調する必要も感じられないかもしれません。このような外国人材のみがどんどん増え続けるのでは、決して、より良い社会が形成されるとは言えないように思います。

それでは、人口減少に対処するために、高齢者ないし女性の労働を活用し、AIとロボット技術に頼ることで足りると言うべきでしょうか。前者の限界は明らかでしょうし、後者について、技術的発展が更に飛躍的に見込まれたとしても、社会の構成として、少数の人とロボットだけで良いかは、思想的、根本的な議論が必要です。

私は、上述の資格転換によって、単純労働者としての定住者を、正規に受入れる余地を更に認めるべきであると考えます。

そのために、技能実習制度の目的として、真正の国際貢献の目的を有する制度を別途設けた上で、単純労働の受入れという目的に焦点を合わせなければなりません。現在も労働法規制の対象となっており、管理体制の強化も図られているところですが、これを更に発展させ、違法な事業所の取締を進めることも必要です。

同時に、将来的に資格転換の余地があることを大前提とした制度設計とする。そして、外国人に対する受入説明において、このことを明記し、わが国における労働意欲の向上を図り、技術習得と、日本の文化的価値観や道徳意識の涵養に向けた自己啓発を促す。かくて、技能的な資格を取得できれば、「準」高度人材外国人として定住してもらう。その資格は一世の外国人が真面目に技術習得に努めれば、5年内に取得可能な、比較的ハードルの低いものにしなければ、これも絵に描いた餅になります。

日本語教育や公民教育、一世である子弟の初等、中等教育の負担増などの初期投資が必要であるとしても、これらの人々の社会保障の費用負担については、人口増に伴うものとして、ある程度予測可能な範囲に留まるのではないでしょうか。

西欧諸国は、長い歴史の中で、無軌道に単純労働者を受入れ、居住区のスラム化と精神的荒廃を招いたという移民問題です。また膨大な難民の受入れは特殊事情によるものです。いずれにせよ、既存の住民社会と、急激に増加した移民社会の分断を来しました。

反対に、わが国の単純労働者の移民受入れは、これから始まろうとしています。現在まで、単純労働の移民受入は拒絶してきたのです。0からの出発なのです。どのような労働者に、どの程度来てもらい、どの範囲で定住化を図るか。その移民の制度設計をこれから進めるという問題なのです。

以前、言及したように、高度人材外国人の定住化、永住化の政策は既に取られています。政府は否定していますが、この意味では、わが国は既に移民政策に転換していると、考えています。高度人材には来て欲しいが、言語や風習、社会制度の相違から、むしろ外国人がこれを嫌い中々進まないとすれば、上のような準高度人材から始めることにも一考の余地があるでしょう。定収のある人々がわが国で家庭を持ち、子弟を育て、日本の社会構成員となって行くのです。

また、逆に、単純労働者が生活しやすい社会に、わが国がなるなら、生活上必要な施設の説明や災害時情報の連絡における多言語化や、そのほか外国人に必要な社会インフラの整備が進むことを意味します。その人口増がこれを促すというのが必然です。そのことでまた、高度人材の住みやすい国となり、これら外国人も集まりやすくなるのではないでしょうか。留学生にもっと来てもらうことにも通じるでしょう。

コメント

_ sabu ― 2018年09月16日 15:32

移民問題について私は違う考えです。EUもアメリカも労働者の低賃金競争が問題です。低賃金の移民流入により自国の労働者と低賃金競争になり所得が減少する。このことが問題だと思います。企業は人件費が削減できるので歓迎でしょう。行き過ぎのグローバル化は格差拡大。自由資本主義経済の崩壊への道
と思います。

_ shosuke-ブログ管理者 ― 2018年09月17日 19:11

有益なコメントに感謝します。注意を要するのは、低賃金労働力の獲得により、製造業等の事業者が国際競争力の回復を図ろうとすることです。安価な労働力を求めて途上国に製造業が移転し、わが国産業の空洞化が生じたことはよく論じられています。低賃金の外国人労働者により、その穴埋めをするとすれば、言われることの一端が当たるでしょう。
しかし、製造業のみならず、サービス業や流通業において、わが国の労働力不足は既に深刻な状態となっています。人口減少社会となったわが国の将来を見据えて、抜本的な解決策が要請されているとも考えられます。
そこで、外国人労働者の移民を受け入れるとしても、慎重な制度設計が必要であるというのが、ブログ筆者の意見です。外国人を、わが国の社会構成員として受け入れるために必要な施策が必要でしょう。技能実習においても、既に労働法規制の対象となっていますが、最低賃金保障やその他の規制を及ぼし、労働条件の内外人平等を義務付けるなら、わが国にとって真に必要な、ここに暮らす日本人ではもう賄えなくなった労働力を補填し、少子高齢化対策ともする。そのために職業訓練等も必要となるでしょう。

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