14年前に亡くなった女の子ー創作 ― 2018年06月02日 14:41
相田みつをの詩に「うん」とうのがあります。以前のブログで紹介した相田みつを美術館(東京駅の近く)でカレンダーを買いました。この詩の書が6月です。
うん うん、苦しかっただろうなあ、辛かっただろうなあ と、うん うんと、頷いて。
そういう詩です。
次は、私の詩です。
すなはま。
砂浜
すな はま
すなの中に
ちいさな ちいさな 足あとが
突然あらわれて
跡を追ってゆくと
ひまわりの花の前。
しゃがみこんで
また
歩き出して
足あとが
突然 消えた。
7年も待って
また7年も待ったのだから
もう出ておいで
もう隠れんぼは いいから
出ておいで
財津和夫の歌に「会いたい」というのがあります。1990年に、沢田知可子という歌手が歌って、大ヒットしました。私は財津和夫のカラオケで、良く歌います。
女性が恋人を失って、その人を思い出しながら、「会いたい」と詩う。男性が歌うと、自分が突然死んでしまって、霊魂となった男が、目の前で嘆き悲しむ恋人を、愛しんでいる詩になります。
「今年も海に行くって
映画もいっぱい見るって 約束したじゃない
会いたい」
と、自分を責める女性をみながら、どうにもならないのです。
林部智史の「会いたい」という歌謡が最近ヒットしたようです。
これも恋人を亡くしてしまった女性の気持ちを詩っています。
「私の笑顔があなたの幸せだとしたら
前を見て生きようと 胸には決めたけど」
どうしても男性を忘れられない女性が、なんとかして涙をこらえているけれど、つい嗚咽を抑えられなくなる。一日中、女性が嘆き悲しむ様子に、霊となった男性は途方にくれます。女性がどうにかなってしまわないか。死んでしまわないか、心配でなりません。
声をかけるけれど、手を伸ばして触れようとするけれど、どうしても届きません。叫んでも、女性には聞こえません。女性の温もりも感じられない。
・・・・
ところが、夜が明けると、
その女性が、長い髪の毛に、朝日をまとって、明るい窓ぎわに立っているのです。自分の目の前に、うれしそうに見つめるその瞳があって、吐息を感じることができるのです。女性がいたわるように優しく触れる指先を感じます。
きっと、天が願いを聞き入れて、男性をこの世に生き返らせたのです。
「ひまわりの約束」という秦基博のフォークソングは有名ですね。どうして君が泣くの?という歌詞で始まります。
「そばにいたいよ 君のために出来ることが 僕にあるかな
いつも君に ずっと君に 笑っていてほしくて
ひまわりのような まっすぐなその優しさを 温もりを 全部
これからは僕も 届けていきたい 本当の幸せの意味を見つけたから」
生まれ変わって、また出会って。
その人を喜ばせることができれば良い。
自分を見て微笑んでいる女性の姿に、男性は有頂天になります。
しかし、女性の様子が少し変なんです。
女性が優しい言葉をかけてくれるのですが、男性が懸命に答えても、女性には分からないようなのです。
天が男性の嘆きに同情して、転生させてくれたのですが、小さな鉢植えのサクラソウになったのです。素焼きの小さな鉢の中に、一輪のサクラソウが咲いています。
窓辺に置いたサクラソウが朝日を浴びていると、女性があいさつをして、水やりをします。うれしそうに、鼻歌を唄っています。
サクラソウになった男性は、鏡に映った自分の姿をみて、このことに気づくのですが、その運命を受容します。
その人のそばに、ずっといられたらそれで良いと、その人が自分をみて笑っているのなら良いと、思います。
河口恭吾の歌った「桜」は、中国でもヒットしたのですが、少し前のヒット曲です。
「僕がそばにいるよ
君を笑わせるから
桜舞う季節かぞえ
君と歩いていこう」
サクラソウのおかげで、女性が次第に元気を取り戻してゆきました。
7年が経って、
そのうち、別の男性と知り合い、親しくなるんです。女性の部屋で、違う男性と嬉しそうに語りあっているのを見ながら、サクラソウが枯れ始めます。
「ハナミズキ」は2004年に発表された一青窈のヒット曲です。作詞した一青窈によると、この曲の詩は、テロで亡くなった人とその恋人や家族のことを謳っているそうです。
果てない夢が終わりますように、果てない波がちゃんと止まりますように。
「君と好きな人が百年続きますように」。
待たなくても良いよ。知らなくても良いよ。
花に泊まった白い蝶が、ひらり、空に飛んで行きます。
役目を終えたサクラソウが枯れて、男性は飛び立って行きました。
・・・・
「14年前の女児殺害事件」
(例えば、http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3382563.html)
5月30日に報道されたニュースです。2004年に岡山県津山市で殺害された当時9歳の女の子のことです。別の事件で服役中の男が逮捕されました。
「どうか皆様、わずか9歳で非道な刃に散った侑子の思い出を、いつまでも忘れないでいただけるなら、幸いです」。
亡くなった女児のお父さんが告別式で述べた言葉です。
犯人逮捕後、このお父さんが、14年間、その子のことを忘れたことが無かったと言っています。(いずれも上のニュースサイトより)
上に描いた恋人を亡くした女性は、この女の子でした。霊としての存在となっていることに、自分では気付かないのです。
亡くなってからずっと、じっと悲しみに堪える父親を見ていたのです。成長した女性の姿でいつものように、自分の家で暮らしているのですが、父親のことを、自分の恋人だと思い込んでしまいました。
なぜか分からないけれど、悲しくて、辛くて。亡くなったその子が泣いていると、いつも優しく声をかけてくれる存在に気づきます。その子の写真を見ながら、語りかけるお父さんです。
父親は、犯人を探すために、今日も街頭に出かけます。恋人だと思って、少女は声をかけて送り出しているのですが、父は気付きません。
漸く犯人が捕まりました。
少女もようやく役目を終えて、天国へ旅たちます。お父さんの歌うハナミズキを聴きながら。
・・・・・
もうすぐ学会報告をしなければならないので、少し忙しくなってきました。2週間ほど更新を休みます。
再開後、またよろしくネ <(_ _)>
以下、6月6日追加。
亡くなった少女の母親の手記が公表されました。
ひまわりが大好きで、大人になったら、花屋さんになりたかった女の子だったそうです。
https://www.asahi.com/sp/articles/DA3S13527816.html
https://www.sankei.com/west/news/180606/wst1806060051-n1.html
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